手外科とは

手外科イメージ

人類が二足歩行を始めた時から私たちは手を進化させてきました。手をじっと見つめると、なぜ指先に爪が生えているのか、なぜ親指だけが違う向きになっているのか、生命線は本当に寿命と関係するのか、などなど、いろいろなことが頭に浮かんできます。手の構造を勉強すると、意のままに手を働かせるためには、実に巧妙なしかけがあることに驚かされます。
手外科では、主に肘から手指までの障害やけがを治療対象としています。
「外科」といっても、手術ばかり行うのではなく、外固定、運動療法、内服治療、注射などを駆使した積極的保存療法を行います。患者様と治療方法についてよく相談し、手術が適切と判断した場合には、当院で上肢だけ痛みを取る伝達麻酔または局所麻酔にて、日帰り外来手術を行います。

重度の内科的疾患をお持ちの方や、お子様については、麻酔科・ICUなど全身管理が十分にできる病院での治療をお勧めいたします。院長は週1回、明理会中央総合病院(北区東十条)で外来と手術を行っており、全身麻酔やハイリスクな手術についても対応させていただきます。

日本手外科学会

手外科で扱う主な疾患

ばね指

朝起きた時の手のこわばり、むくみなどから始まる腱鞘炎症状から始まり、ひどくなると指の曲げ伸ばしで痛みが出たり、ひっかかりがおこります。指を曲げるのに屈筋腱が浮き上がらないように靭帯性腱鞘というトンネル構造があり、そこに屈筋腱が引っかかることが原因です。治療には局所の安静、外用薬、ステロイドと麻酔薬の注射から始め、治らない方には腱鞘切開術を行います。

ドケルバン腱鞘炎

手首の親指側に痛みや腫れがみられる病気で、親指の腱と腱鞘に炎症が起きています。発症しやすいタイプとしては、手指をよく使う方(PC作業、字を書く、手を酷使する仕事 等)、妊娠期や出産期・更年期の女性のほか、糖尿病や関節リウマチの患者様などにも起きやすいと言われています。

主な症状は、親指の腫れや痛み(親指を手首の内側に向けて動かすなどすると痛みが出やすい)、親指を動かしにくい、しびれがみられるなどです。

治療は、保存療法と手術療法があります。前者では、手(親指)を酷使している場合は装具を着けるなどして固定して安静にする、消炎鎮痛薬の内服あるいは外用薬の使用等があります。なかでも効果的とされているのが腱鞘内のステロイド注射です。ただ、繰り返し注射をすれば腱を痛めるので、何度も注射をするようであれば手術をする必要があります。保存療法が有効でない場合には手術療法(腱鞘切開術)を行います。この場合、炎症部位の腱鞘を切開して、腱を開放することで痛みなどの症状が解消されるようになります。手術時間は10分程度です。

手根管症候群

両手のひらの親指から薬指の内側半分の範囲(正中神経に支配される領域)にかけて痛みやしびれがみられている状態を手根管症候群と言います。このほかにも指を使う動作がしにくくなる、手関節を曲げたり伸ばしたりすることで病状を悪化させることもあります。
症状は夜間や起床の際にかけて強くなるとされ、正中神経が圧迫することで発症するようになります。なお7割程度の患者様に左右両手で症状がみられます。

手首を酷使する仕事をしていたり、妊娠期あるいは更年期の女性、手根管内に腫瘤が発生する発症しやすく、女性の患者数は男性の4倍以上とも言われています。

治療には、保存療法と手術療法があります。保存療法としては、装具などを使って手首を固定し、手根管の炎症が周囲に及ぶのを抑えたり、消炎鎮痛薬やビタミンB12を用いたりします。また手根管内にステロイドを注射することで神経への圧迫を取り除くと症状が緩和することがあります。

上記の治療法では改善が困難と判断されると手術となります。この場合、正中神経を覆っている横手根管靭帯を切開することで、圧迫状態は開放されるので、それによる症状は解消されるようになります(手根管開放術)。手術時間は20分程度です。

肘部管症候群

肘の内側にある尺骨神経は肘部管を通っていますが、その際に圧迫もしくは牽引されることで慢性的に薬指の一部や小指にしびれがみられます。これがさらに進行すると小指や薬指を伸ばしにくくなったり、手の筋肉がやせ細ったりします。圧迫の原因については、加齢や骨折などによる肘の変形、ガングリオンなどの腫瘤、スポーツによる肘の酷使、靱帯の肥厚などが挙げられます。

治療は、しびれの症状が軽度であれば保存療法です。安静に努める、痛み止め(NSAIDs)やビタミンB12などの薬物療法を行っていきます。それでも改善が困難で、麻痺が出現した場合は、手術療法として除圧術や神経前方移行術(尺骨神経を前方に移行させることで、圧迫状態による緊張を和らげていく)などが行われます。

へバーデン結節

へバーデン結節は、手指(親指は症状が出ないこともある)の第1関節の甲側が赤く腫れて変形がみられる(水ぶくれができることもある)ほか、動きも悪くなります。痛みが出るので手を強く握れないこともあります。なお発症の原因は特定できておりません。

この病気の特徴として40歳以上の女性が発症しやすいことから、関節リウマチをご心配される方がおられます。関節リウマチの手指の第2関節や根元の関節に症状がみられます。

治療が必要な場合、患部をサポーターやテーピングで固定していくほか、痛みが強く出ている場合は、痛み止めの内服薬や湿布、あるいは関節注射を用います。上記の治療のみでは、痛みが治まらない、関節の変形がさらに進行しているとなれば、手術療法が選択されます。この場合、関節固定術が行われます。

母指CM関節症

手の親指の付け根付近にある関節を母指CM関節と言います。同関節は親指の動きをコントロールする役割があるとされ、さまざまな角度に動かしやすいという特徴もあります。この関節を酷使する、あるいは加齢により軟骨がすり減るなどして関節が変形(変形性関節症)すると、蓋を開ける、物をつかむ、親指の付け根を押したときに痛みがみられるようになります。閉経後の女性に発症しやすく、変形の状態については外見からも確認できるようになります。なお両手で起きることもあれば、片手のみということもあります。

治療の基本は保存療法となります。具体的には、患部を装具で固定する、湿布や外用薬を使用するなどしていきます。それでも炎症や痛みが治まらないという場合は、CM関節に向けて注射する関節内注射を行います。このほか、温熱療法も有効と言われています。保存治療のみでは改善が困難と判断されると手術療法(関節形成術、関節固定術)が選択されます。

ガングリオン

主に手関節や手指の付け根付近から発生する腫瘤のことをガングリオンと言います。その中身は関節液で、これに触れると弾力性はありますがやや硬い感じがします。発症の原因は特定されていませんが、関節包や腱鞘の一部が脆弱化することで発生します。女性の患者様が多いのも特徴です。

腫瘤の大きさには、米粒大のものからピンポン玉まで様々ですが、自然につぶれる、あるいは消失するということもあるので、放置でも問題ありません。ただガングリオンによって神経が圧迫を受けて痛みがでたり、指の曲げ伸ばしが上手くできないという場合は、手術的に袋ごと摘出する、または関節と交通する部分を切除する必要があります。ただし、別の場所から再発することが多いのも特徴です。

デュピュイトラン拘縮

手のひらにある手掌腱膜が肥厚化し(しこりやこぶ状のようなものができる)、やがて拘縮することで指を伸ばすことが困難になる病気です。痛みなどの自覚症状はありません。まず手のひらの小指や薬指の屈筋腱に沿うような形で腫瘤が発生します。その後、数年~数十年という単位で主に薬指や小指付近の皮膚がひきつれることで、これらの指が曲げにくくなっていきます。原因に関しては現時点で特定されておらず、高齢者や糖尿病患者様によく見受けられることが分かっています。

手のひらで水がすくえない、顔に手をもっていったときに当たるなど、日常生活に支障をきたす場合には手術を行います。増殖して硬くなった腱膜を切除します。手術後は装具による患部固定(就寝時)やリハビリテーション(指の屈曲運動 等)を続けていきます。